【働く車の雑学】 パッカー車(ごみ収集車)の仕組みと知られざる秘密
私たちが暮らす街を美しく保つために、毎日欠かせない存在である「ごみ収集車」。一般的には「パッカー車」という名前で親しまれていますが、この車がどのような仕組みで大量のごみを回収し、運んでいるのかを詳しく知っている人は少ないかもしれません。
先週は「クレーン車」についてご紹介しましたが、今回の「働く車の雑学」第2弾は、私たちの生活に最も密着している働く車、「パッカー車」の知られざる秘密に迫ります。

毎日当たり前のように呼んでいる「パッカー車」という言葉。実はこれ、日本の法律や自動車の正式な分類上の名称ではありません。
日本の行政や自動車業界における正式名称は「塵芥車(じんかいしゃ)」といいます。「塵芥」とは、チリやゴミという意味です。
では、なぜパッカー車と呼ばれるようになったのでしょうか。その理由は、英語の「pack(詰め込む)」という動詞にあります。ごみを内部にギュッと詰め込む(パッキングする)機能を持つトラックであることから、パッカー車という俗称が定着しました。ちなみに、架装メーカー(トラックの荷台部分を作る会社)によっては「プレスマスター」や「パックマスター」といった独自の商標名で呼ぶこともあります。

パッカー車の最大のすごさは、投入されたごみをまたたく間に車内へと巻き込み、圧縮していく強力なメカニズムにあります。このごみを集める仕組み(集塵機構)には、大きく分けて「回転板式(プレス式)」と「巻き込み式(回転式)」の2種類が存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。
① プレス式(圧縮板式)
現在、街中で多く見かけるのがこのプレス式です。 投入口に置かれたごみを、強力な「押し込み板」が斜め下に向かってプレスし、さらに奥へと押し込んでいきます。
- メリット: 非常に強い圧力をかけることができるため、固いごみや、家具などの粗大ごみ、段ボールなどもバリバリと噛み砕いて容積を小さくできます。
- 用途: 主に事業系ごみや、不燃ごみ、粗大ごみの回収に活躍します。
② 回転式(巻き込み式)
投入口にある大きな回転ドラム(または回転板)が、ごみを文字通り「巻き込む」ようにして奥へと送り込む方式です。
- メリット: 連続してごみを投入しやすく、プレス式に比べて作業音が比較的静かという特徴があります。また、ごみを「押し潰す」というよりは「奥へ送り込む」性質が強いため、水分を多く含む生ごみが飛び散りにくいという利点もあります。
- 用途: 一般家庭から出る可燃ごみ(生ごみなど)の収集によく使われています。

見た目は一般的な2トントラックや4トントラックと同じサイズに見えるパッカー車ですが、実は普通のトラックよりも遥かに大量の荷物(ごみ)を積むことができます。
例えば、一般的な2トントラックにそのままごみを積もうとすると、かさばってしまって大した量は載りません。しかしパッカー車は、内部でごみを約3分の1から、最大で5分の1の容積にまでギューギューに圧縮します。
【雑学ポイント】 2トンクラスのパッカー車1台で、およそ**「約1,000世帯分」**の家庭ごみを一度に収集して運ぶことができると言われています。もしパッカー車の圧縮機能がなければ、街中をごみ収集車だらけにしなければならず、現在のクリーンな社会は維持できないのです。

街のヒーローであるパッカー車ですが、その強力な圧縮力ゆえに、一歩間違えると重大な事故につながる危険も秘めています。
火災の恐怖「リチウムイオン電池」と「ガスボンベ」
近年、パッカー車の火災事故が全国で相次いでおり、大きな社会問題となっています。原因の多くは、不燃ごみや可燃ごみに混入してしまった「スプレー缶(カセットボンベ)」や、スマートフォン・加熱式タバコに使われている「リチウムイオン電池」です。 パッカー車がごみをプレスした際、缶に残ったガスに火花が引火したり、リチウムイオン電池が押し潰されてショート・発火したりすることで、荷台の内部から激しく燃え上がってしまうのです。ごみを出す側の私たちが、分別ルールを徹底することが何よりの防止策になります。
作業員の安全を守る「緊急停止ボタン」
パッカー車の後部(ごみ投入口付近)をよく見ると、目立つ場所に赤色の大きなボタンやレバーが設置されています。これは「緊急停止スイッチ」です。 万が一、作業員の衣服や手、あるいは想定外の危険物が巻き込まれそうになった際、このボタンを押すことで一瞬にして作動がストップする仕組みになっています。子供たちが興味本位で触ると大変危険なため、近づかないよう周囲の大人が見守る必要があります。

5. まとめ:日本の美を支える「縁の下の力持ち」
普段、何気なく見かけているパッカー車。その内部には、効率よくごみを運ぶための高い技術と、街の衛生環境を守るための工夫が詰まっています。
もし街中でパッカー車を見かけたら、「ただごみを運んでいる車」ではなく、「驚異の圧縮テクノロジーで日本の美しさを支えている、働く車」として、その機能美に注目してみてはいかがでしょうか。ただし、作業中の車の後ろは危険を伴うため、見学するときは少し離れた安全な場所から見守るようにしましょうね。
次回の「働く車の雑学」シリーズもお楽しみに!
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